FREEHAND

第1章 『朱に染まりし始まり』

DROW:16 真実を告げる鏡面の水




走って、いた。

ただ、ひたすら。

後ろを顧みずに。

アレから、逃げていた。




ゴポ。




「何故、逃げてばかりいるの?」

なにかが、足を掴んだ。

冷たい、冷たい、なにかが。

下を、見る。


鏡面の水。


写るのは、自分と同じ青い髪を持つ至高のものたる存在。


「貴方は…逃げて、逃げて、逃げて。私から逃げることばかり考えている」


足を掴んだのはそのモノの右手。


「表面上の姿は偽り。すべては…私から逃れる為」


さらに、左手が、でる。


「私は貴方をこんなにも必要としているのに…」


顔。


「貴方もまた私を必要とするはずなのに…」


体。


「それなのに貴方は私を見てくれなくて…」


足。


「どうして…」



その、すべ…て。



「どうして、私達から逃げるの…リーグ」





ばしゃん。





引きずりこまれる。


「いや…だっ!」


抗う事を許さぬ、力。


それが、自分を縛りつける。


「僕は…もういやだ!!いやなんだ!!」


悲鳴。


決して届かない、その言葉。


「僕が全てを壊してしまった!それなのに、君達はまだ僕を責め立てるの!?その力を使えとまだ

 言うの!?」



悲痛な悲鳴にも似た叫びが木霊する。




もう、嫌だと。




そう叫んで…喚いて。





「…もう、僕はいやなんだ…!もう何かを壊してしまうのは…!」





涙が一粒、落ちた。



それは、拒絶。



彼女達への、拒絶。



水が、音を立てて跳ねた。


もう、そこに、彼女達の存在は、感じられなかった。



彼女達は、消えてしまった。


そこに残るのは、鏡面の水。



それは、自分の心を移す鏡。



もしくは・・・


真実を、写す鏡。




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